。一説に依れば仏人の脚肉《きやくにく》を食ふは、故《ことさ》らに英人の風習に従ふを屑《いさぎよし》とせざる意気を粧ふに過ぎず。故に仏人の熱灰《ねつくわい》上に※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の脚を炙《あぶ》るを見て、英人は冷笑すと。想ふに将来我国人は背肉をも脚肉をも食するならん。吾人は※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]肉《がくにく》輸入の有望なる事業たるを認め歓迎に吝《やぶさか》ならざるものなり。実に我国に於て未だ※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]肉食用の行はれざるは大欠点と云ふべし。既に食※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《しよくがく》の端緒は開かれたるを以て、数百疋の※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の輸入せらるゝ時期もまた恐らくは一年を出でざるべし。且将来我国に於ても※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]を繁殖せしむる事必ずしも不可能にあらざるべし。縦令《たとへ》ネワ河水にして、この南国動物の為めに寒冷な
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