魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の腹の中でどうしてゐるかと問ふのだね。第一に意外なのは、この※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]と云ふものは体の中がまるで空虚なのだ。それ、あのモルスカヤだの、ゴロホワヤだの、それから僕の覚え違へでないなら、あのヲスネツセンスキイ区にもあるが、好く大きな店の窓に飾つてあるゴム細工があるね。あの大きい空虚な袋のやうな工合だよ。さうでなかつたら、君、考へて見たつて分かるだらうが、かうしてゐられたものではないからね。」
 己は不思議に思はずにはゐられなかつた。
「さうかねえ、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]と云ふものはそんなにからつぽなものかね。」
 イワンは厳格な調子で、詞に力を入れて云つた。「全然空虚だよ。而も察するにそれが自然の法則で、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]と云ふものはさうしたものなのだらう。そこで※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]と云ふものは、あの鋭い牙の植ゑてある、大きな顎と、長い尾とから成立つて
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