里芋の芽と不動の目
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)盛《さかん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)理学博士増田|翼《たすく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「均のつくり」、第3水準1−14−75]
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東京化学製造所は盛《さかん》に新聞で攻撃せられながら、兎《と》に角《かく》一廉《ひとかど》の大工場になった。
攻撃は職工の賃銀問題である。賃銀は上げて遣《や》れば好い。しかしどこまでも上げて遣るというわけには行かない。そんならその度合はどうして極《き》まるか。職工の生活の需要であろうか。生活の需要なんぞというものも、高まろうとしている傾《かたむき》はいつまでも止まることはあるまい。そんなら工場の利益の幾分を職工に分けて遣れば好いか。その幾分というものも、極まった度合にはならない。
工場を立てて行くには金がいる。しかし金ばかりでは機関が運転して行くものではない。職工の多数の意志に対抗する工場主の一人の意志が
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