は只じいっと空《くう》を見ている。
 一人の娘が又こう云った。
「馬鹿に小さいのね」
 今一人が云った。
「そうね。こんな物じゃあ飲まれはしないわ」
 今一人が云った。
「あたいのを借《か》そうかしら」
 愍《あわれみ》の声である。
 そして自然の銘のある、耀く銀の、大きな杯を、第八の娘の前に出した。
 第八の娘の、今まで結んでいた唇が、この時始て開かれた。
 “[#「“」は下付き]MON《モン》. VERRE《ヴェエル》. N'EST《ネエ》. PAS《パア》. GRAND《グラン》. MAIS《メエ》. JE《ジュ》. BOIS《ボア》. DANS《ダン》. MON《モン》. VERRE《ヴェエル》”[#「”」は下付き]
 沈んだ、しかも鋭い声であった。
「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴《いただ》きます」と云ったのである。
 七人の娘は可哀らしい、黒い瞳《ひとみ》で顔を見合った。
 言語が通ぜないのである。
 第八の娘の両臂は自然の重みで垂れている。
 言語は通ぜないでも好《い》い。
 第八の娘の態度は第八の娘の意志を表白して、誤解すべき余地
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