長谷川辰之助
森林太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)和《やはら》かな

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)とう/\
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 逢ひたくて逢はずにしまふ人は澤山ある。
 それは私の方から人を尋ねるといふことが、殆ど絶待的に出來ないからである。何故出來ないか、私には職務があると辯解して見る。併し此辯解は通らない。誰だつて職務の無いものはあるまい。何かしらしてゐるだらう。
 役所に出る前、役所を引いた後、休日などがあるから、人を尋ねれば尋ねられる筈である。ところが、朝なぞは朝飯を食つてゐるとお客に掴まる。夕方歸つて見ると、待ち受けてゐる人がある。土曜日の午後、日曜日、大祭日なぞには朝からお客に逢ふ。一人と話をしてゐるうちに、後の一人が見える。とう/\日が暮れてしまふ。
 面會日といふものを極めてゐる人もある。極めるとなると、なんだ
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