て奥へ通るので、五郎兵衛は先に立つて、納戸《なんど》の小部屋に案内した。五郎兵衛が、「どうなさる思召《おぼしめし》か」と問ふと、平八郎は只《たゞ》「当分厄介になる」とだけ云つた。
陰謀の首領をかくまふと云ふことが、容易ならぬ罪になるとは、五郎兵衛もすぐに思つた。併《しか》し平八郎の言ふことは、年来|暗示《あんじ》のやうに此|爺《ぢ》いさんの心の上に働く習慣になつてゐるので、ことわることは所詮《しよせん》出来ない。其上親子が放さずに持つてゐる脇差も、それとなく威嚇《ゐかく》の功を奏してゐる。五郎兵衛は只二人を留めて置いて、若《も》し人に知られるなら、それが一刻も遅く、一日も遅いやうにと、禍殃《くわあう》を未来に推《お》し遣《や》る工夫をするより外ない。そこで小部屋の襖《ふすま》をぴつたり締め切つて、女房にだけわけを話し、奉公人に知らせぬやうに、食事を調《とゝの》へて運ぶことにした。
一日立つ。二日立つ。いつは立《た》ち退《の》いてくれるかと、老人夫婦は客の様子を覗《うかゞ》つてゐるが、平八郎は落ち着き払つてゐる。心安《こゝろやす》い人が来ては奥の間へ通ることもあるので、襖一重《ふすま
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