羽織を脱《ぬ》いで平八郎に襲《かさ》ねさせたので、誰よりも強く寒さに侵《をか》されたものだらう。平八郎は瀬田に、兎《と》に角《かく》人家に立ち寄つて保養して跡から来るが好いと云つて、無理に田圃道《たんぼみち》を百姓家のある方へ往かせた。其|後影《うしろかげ》を暫く見送つてゐた平八郎は、急に身を起して焚火を踏み消した。そして信貴越《しぎごえ》の方角を志《こゝろざ》して、格之助と一しよに、又|間道《かんだう》を歩き出した。
瀬田は頭がぼんやりして、体《からだ》ぢゆうの脈が鼓《つゞみ》を打つやうに耳に響く。狭い田の畔道《くろみち》を踏んで行くに、足がどこを踏んでゐるか感じが無い。動《やゝ》もすれば苅株《きりかぶ》の間の湿《しめ》つた泥に足を蹈《ふ》み込む。やう/\一軒の百姓家の戸の隙《すき》から明かりのさしてゐるのにたどり着いて、瀬田ははつきりとした声で、暫《しばら》く休息させて貰《もら》ひたいと云つた。雨戸を開けて顔を出したのは、四角な赭《あか》ら顔の爺《ぢ》いさんである。瀬田の様子をぢつと見てゐたが、思《おもひ》の外《ほか》拒《こば》まうともせずに、囲炉裏《ゐろり》の側《そば》に寄つて
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