~するところに住まりて、さて不幸に遭《あ》はば、そは自ら作《な》せるなれば、悔ゆることもあらざるべし。おん身は最早童にあらねば、人の監督を受くることをば喜ばざるべし。この頃|醫師《くすし》に謀《はか》りしに、これも轉地を勸めたり、拿破里《ナポリ》の方《かた》をば既に見つれば、こたびは北伊太利を見に往けかし。一とせの間の費《つひえ》をば、われいかにともすべし。此館にありし間の我等の待遇には、おん身は或は慊《あきたら》ざりしならん。されど又世間に出でゝは、誠の心もておん身を待つ人少きことを忘れ給ふな。われ等は未來|一年《ひとゝせ》の間のおん身の振舞を見て、過去の我等の待遇のおん身に利ありしか利あらざりしかを驗《ため》すべしといはれぬ。
公子は我答を待たずして室を出で給ひぬ。こは我に謀るにあらずして我に命ずるものなればなり、我に命ずるは我を逐《お》ふものなればなり。世途は艱難ならん。されどその我を毒すること今の生涯に孰與《いづれ》ぞ。今や公子はわれに自由を與へ給ふ。こは仙方なり、靈藥なり。われは只だその仙方靈藥の劇毒の如く我創痍を刺し、我に苦痛を與ふるを感ずるのみ。去らんかな、羅馬を去らん
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