^」派學校の生徒たる日と異ならざりき。此間に處して、我は六とせを經たり。今よりしてその生活を顧みれば、波瀾層疊たる海面を望むが如し。好くも我はその波濤の底に埋沒し畢《をは》らざりしことよ。讀者よ、わが物語を聞くことを辭《いな》まざる讀者よ。願はくは一氣に此一段の文字を讀み去れ。われは唯だ省筆を用ゐて、その大概を敍して已みなんとす。
この六年《むとせ》の歴史はわが受けし精神上教育の歴史なり。この教育は人の師たるを好むものゝことさらに設けたる所にして、不便《ふびん》なる我はこれを身に受けざること能はざりしなり。人々は我を善人とし、我に棄て難き機根ありとして、競ひて自ら教育の任を負へり。恩人はその恩を以て我に臨みて我師たり。恩人ならぬ人はわが人好《ひとよ》きに乘じて僭《せん》して我師となれり。我は忍びて無量の苦を受けたり。そは教育といふを以ての故なり。
主公はわが學の膚淺《ふせん》なるを責め給へり。我はいかに自ら勵まんも、わが一書を讀みたる後、何物か我胸中に殘れると問はゞ、そはたゞ其卷册の裡より我心に適《かな》へるものを抽《ぬ》き出し得たりといふのみにて、譬へば蜂の百花の上に翼を休めて、
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