ンて行かじといふを、公子強ひて説き勸め、草木生ひたりと見ゆる岸邊をさして漕ぎ近づかせしに、程近くなるに從ひて、人の僵《たふ》れ臥したりと覺しきを認め、さてこそ我を救ひ取り給ひしなれ。われは緑なる灌木の間に横はり、我衣は濱風に吹かれて半ば乾きたりしなり。公子は舟人して我を舟に扶《たす》け載せしめ、おのれの外套もて被ひ、手の尖《さき》胸のあたりなど擦《す》り温めつゝ、早く我呼吸の未だ絶え果てぬを見給ひぬといふ。われはかくてこゝに伴はれ、醫師《くすし》の治療を受けつるなりけり。
さればジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]と二人の舟人とは魚腹に葬《はうむ》られて、われのみ一人再び天日を見ることゝなりしなり。人々は我に當時の事を語らしめたり。われは光まばゆき洞窟の中に醒《さ》めしを姶とし、目しひたる少女を載せ來し翁に遭へるに至るまで、そのおほよそを語りしに、人々笑ひて、そは熱ある人の寒き夜風に觸れ、半醒半夢の間にありて妄想せるならんといへり。げにわれさへ事の餘りに怪しければ、夢かと疑ふ心なきにしもあらねど、また熟※[#二の字点、1−2−22]《つく/″\》思へばしかはあらじと思ひ返さざることを
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