sこわね》は尋常《よのつね》ならず、譬へば泉下の人の假に形を現して物言ふが如くなりき。我即興詩は漫《みだ》りに混沌の竅《あな》を穿《うが》ちて、少女に宇宙の美を教へき。今や少女は期《ご》せずして我前に來り、我に眼を開かんことを請《こ》へり。われは少女の聲の我心魂に徹するを覺えて、口一語を出すこと能はず、只だ手を少女の方にさし伸べたるのみ。少女は再び身を起して、我に光明を授け給へと唱へかけしが、張り詰めし氣や弛《ゆる》みけん、小舟の中にはたと伏し、舷側《ふなばた》なる水ははら/\と火花を飛しつ。
 翁は暫く身を屈して、少女のさまを覗《うかゞ》ひ居たるが、やをら岸に登りて、きと眼を我姿に注ぎ、空中に十字を書し、彼|大銅鉢《だいどうはつ》を抱いて舟中に移し、己も續いて乘りうつれり。われは思慮するに遑《いとま》あらずして、同じく舟に上りしに、翁は我を迎へんともせず、さればとて又我を拒《こば》まんともせず、只だ目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》りて我を視るのみ。翁は又|※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を握りて、彼青き星に向ひて漕ぎ行けり。冷なる風は舟に向ひて吹
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