ミて竪立《じゆりつ》せる一道の黒雲あり。形は圓柱の如く、色は濃墨の如し。その四邊《あたり》の水、恰も鍋中の湯の滾沸《こんふつ》せるが如くなり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]はいづかたに避くるかと問へり。少年は後々《あと/\》といへり。われ。されば又全島を巡らんとするか。少年。風なき方の岩に沿うて漕がん。龍卷は島を離れて走る如し。翁。此小舟の若し岩に觸れて碎けずば幸なり。語未だ畢らず、龍卷の嚮《むき》は一轉せり。一轉して吾舟の方に進めり。その疾《と》きこと※[#「風にょう+(犬/(犬+犬))、第4水準2−92−41]風《へうふう》の如し。舟若し高く岩頭に吹き上げられずば、必ず岩根に傍《そ》ひて千尋《ちひろ》の底に壓《お》し沈めらるべし。われは翁と共に※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を握りつ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]も亦少年を扶《たす》けて働けり。されど風聲は早く我等の頭上に鳴りて、狂瀾は既に我等の脚下に翻《ひるがへ》れり。二人の漕手は異口同音に、尊きルチア、助け給へと叫びつゝ、※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]を捨てゝ跪拜せり。ジエンナロ[#「ジ
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