ヘこれを限なるを思ひ給へ。われは再び此地に來るものにあらず。さるを君は我が手を握らんといふをだに聽き納《い》れたまはず。我胸には君に言ふべき事さはなれど、君が手を握らんの願の外は、われ敢て口に出さじ。聖母《マドンナ》は我等に何とか教へ給ふぞ。人は兄弟姉妹の如く相愛せよとこそ宣給《のたま》へ。われはおん身の兄弟なり。我黄金をおん身と分ちて、おん身の艷《あで》やかなる姿を飾る料《かて》となさんとこそ願へ。貴き飾を身に着け給はば、おん身の美しさ幾倍なるべきぞ。おん身の友だちは皆おん身を羨むべし。されど我とおんみとの中をば世に一人として知るものなからん。斯く云ひも果てず、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は一躍して窓より入りぬ。新婦《にひよめ》は高く聖母の名を叫べり。
 われは表の窓に走り寄りて、力を極めて其扉を打ちたり。硝子《ガラス》はから/\と鳴りたり。我は目に見えぬ威力に驅らるゝものゝ如く、走りて裏口に至り、得物《えもの》もがなと見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]す傍《かたへ》の、葡萄|架《だな》の横木引きちぎりつ。女はニコオロ[#「ニコオロ」に傍線]にやと叫べり。さなり、我
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