驍ニころ人の心をやはらぐ、されば美しき女に接吻を求むるは我權利なり、我が受け納るべき租税なり、これをばおん身も拂ひ給はざるべからずといひて、つとあるじの手を※[#「てへん+參」、107−上段−22]《と》りたり。女主人。われは人の心やはらげ給ふといふおん惠に與《あづか》らんことをも願はず、さればさる租税をもえ納め侍らず。我租税をば、我夫自ら來りて收め取る習なり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。その夫はいづくにあるか。女主人。さまで遠からぬところにあり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。われは拿破里に居れども、いまだかくまで美しき手を見つることあらず。此上に接吻一つせんといはゞ、價いくばくをか求め給ふ。女主人。盾銀《たてぎん》一つにては貴かるべきか。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。さらば盾銀二つ出さば、唇をも任せ給ふべきか。女主人。否、そは千金にも換へ難し。そは吾夫の特權なり。この對話の間、女あるじは我等に酒を侑《すゝ》めて、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]の慣々《なれ/\》しきをも惡《にく》む色なく、尚暫く無邪氣なる應答をなし居たり。我等はあるじのまことは十四歳にて
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