ユき程の御事なり、戸外に持ち出でてまゐらせん、されど酒は只だ一種《ひとくさ》ならでは貯《たくは》へ侍らずと笑ひつゝ答ふ。その眞白なる齒に、唇の紅はいよ/\美さを増すを覺えき。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。酒はいかなる酒にもあれ、君の酌《く》みて給はらんに、旨《うま》からぬことやはある。美しき娘の酌める酒をば、われ平生|嗜《たしな》みて飮めり。女主人《をみなあるじ》。されどけふは美しき娘のあらねば、色香なき人妻の酌みてまゐらするを許し給へ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。さらば君ははや主《ぬし》ある花となり給ひしにや、そのうら若さにて。女主人。否、われははや年多くとりたり。この時|傍聽《かたへぎき》したりしわれ、おん身の芳紀《とし》いくばくぞと問ひぬ。想ふにこの女子まだ十五ばかりなるべけれど、脊丈《せたけ》伸びて恰好《かつかう》なれば、行酒女神《ヘエベ》の像の粉本とせんも似つかはしかるべし。女主人はわが何の爲めに問ひしかを疑ふものゝ如く、我面を暫し守りて二十八歳と答へつ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。そはまことに好き年紀《としごろ》にて、殊におん身には似あひたり。さ
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