フ石橋あり。こなたの巖端《いははな》よりかなたの巖端に架したり。橋下の辻は市内第一の大逵《ひろこうぢ》なるべし。二少女ありて「サタレルロ」の舞を演せり。貌《かほばせ》めでたく膚|褐《かち》いろなる裸※[#「ころもへん+呈」、第3水準1−91−75]《らてい》の一童子の、傍に立ちてこれを看るさま、愛《アモオル》の神童に彷彿《はうふつ》たり。人の説くを聞くに、この境《さかひ》寒《さむさ》を知らず、數年前|祁寒《きかん》と稱せられしとき、塞暑針は猶八度を指したりといふ。(寒暑針はレオミユウル[#「レオミユウル」に傍線]式ならん。)
 巖頭に小さき塔ありて、美しき入江の景色の、遠く大小二島の邊まで見ゆる處より、蘆薈《ろくわい》、「ミユルツス」の間を通ずる迂曲《うきよく》せる小みちあり。これを行けば、幾《いくばく》もあらぬに、穹窿《きゆうりゆう》の如く茂りあへる葡萄《ぶだう》の下に出づ。我等は渇を覺えぬれば、葡萄圃のあなたに白き屋壁の緑樹の間より見ゆるを心あてに歩《あゆみ》をそなたへ向けたり。輕暖の空氣の中には草木の香みち/\て、美しき甲蟲《かぶとむし》あまた我等の身邊に飛びめぐれり。
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