梛Lせしところの一歌謠の調を借りて、目前の景を歌ひ出せり。山水の美、古藝術のすぐれたる遺蹟を見るにつけ、哀なるはかの目しひたる少女《をとめ》の上にぞある。この自然の無盡藏は誰も受くべき賜《たまもの》なるに、少女はそをだに受くることを得ずといふ。是れ我一曲の主なる着想なりき。歌|※[#「門<癸」、第3水準1−93−53]《をは》る比《ころほ》ひには、われ聲涙共に下るを禁ずること能はざりき。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は手を拍《う》ちて激賞し、公子夫妻はわが多少の情あるを認諾せり。
 人々は石級を下りぬ。われはこれに從はんと欲して、ふと頭《かうべ》を囘《めぐ》らしゝに、我が倚《よ》りたりし柱の背後《うしろ》に、身を薫高き「ミユルツス」の叢《そう》に埋めて、もろ手を項《うなじ》に組み合せたる人あるを見き。而《しか》してそはかの目しひたる少女なりき。われはこの哀むべき少女の我歌を聞きしを知りぬ、我がその限なき不幸を歌ふを聞きしを知りぬ。餘りの便《びん》なさに、身を僂《かゞ》めてさし覗けば、袖は梢に觸れてさや/\と鳴り、少女はさとくも頭を擡《もた》げつ。われは思做《おもひなし》にや、その
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