ヘ岸|拍《う》つ波に似たり。その落ちて地上に留まるや、猶暫くその火紅を存じて、銀河の側に輝く星を看る如し。既にして空氣は漸くその隅角と周縁とを冷却して黒變せしめ、そのさま黒き絲もて編める網に黄金を裹《つゝ》める如し。
 熔巖の流れ行く先なる葡萄の幹に聖母《マドンナ》の像を懸《か》けたるものあり。こはその功徳《くどく》もて熔巖の炎を避けんとのこゝろしらひなるべし。されど熔巖はその方嚮《はうかう》を改めず。像を懸けたる一本《ひともと》の葡萄は、早く熱のために葉を焦《こが》し、その幹は傾きて、首を垂れ憐を乞ふ如くなり。衆人《もろひと》の中なる淳樸《じゆんぼく》なる民等が眼は、その發落《なりゆき》いかならんとこの尊き神像に注げり。幹は愈※[#二の字点、1−2−22]曲り低《た》れて、今や聖母《マドンナ》のおほん裳裾《もすそ》と火の流との間數尺となりぬ。忽ち我が立てる側なるフランチスクス[#「フランチスクス」に傍線]派の一僧ありて、もろ手高くさし上げて叫べり。聖母は火に燒かれ給はんとす。汝等を永劫不滅の火焔の中より救ひ給ふ聖母なるぞ。早や助け出さずやといふ。衆人は皆震慄して一歩退き、畏怖の眼を※
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