焉sきくな》らく、昔はボツカチヨオ[#「ボツカチヨオ」に傍線]涙をヰルギリウス[#「ヰルギリウス」に傍線]の墳《つか》に灑《そゝ》ぎて、譽を天下に馳せたりとぞ。われ韮才《ひさい》、固《もと》よりこれに比すべきにあらねど、けふヱズヰオ[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山の我詩思を養ひしは、未だ必ずしもむかし詩人の墳のボツカチヨオ[#「ボツカチヨオ」に傍線]の天才を發せしに似ずばあらず。
 博士はわれ等を誘ひて其家にかへりぬ。われは前度の別をおもひて、サンタ[#「サンタ」に傍線]夫人との應對いかがあらんと氣遣ひしに、夫人の優しく打解けたるさまは、毫も疇昔《ちうせき》に異ならざりき。夫人はわが即興の手際を見んとて、こよひの登山を歌はせ、辭《ことば》を窮《きは》めて我才を讚めたり。

   嚢家

 サンタ[#「サンタ」に傍線]のわれに優しきことは昔に變らず。されど人なき處にてこれと相見んことの影護《うしろめ》たくて、若しフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]の共に往かざるときは、必ず人の先づ集《つど》ひたらん頃を待ちて、始ておとなふこととなしつ。現《げ》にあやしきものは人の心なり。曾て心にだに留《
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