ヘ》る。平地の中央に圓錐形の灰の丘あり。是れ火坑の堤なり。火球の如き月は早く昇りて、此丘の上に懸れり。我等の來路に此月を見ざりしは、山のために遮られぬればなり。忽ちにして坑口黒烟を噴き、四邊闇夜の如く、山の核心と覺しき處に不斷の雷聲を聞く。地震ひ足危ければ、人々相|倚《よ》りて支持す。忽ち又千百の巨※[#「石+駮」、第3水準1−89−16]《きよはう》を放てる如き聲あり。一道の火柱直上して天を衝き、迸《ほとばし》り出でたる熱石は「ルビン」を嵌《は》めたる如き觀をなせり。されど此等の石は或は再び坑中に沒し、或は灰の丘に沿ひて顛《ころが》り下り、復た我等の頭上に落つることなし。われは心裡に神を念じて、屏息《へいそく》してこれを見たり。
兵卒は、客人《まらうど》達は山の機嫌好き日に來あはせ給ひぬとて、我等を揮《さしまね》きて進ましめたり。われは初めその何處に導くべきかを知らざりき。火を噴ける坑口は今近づくべきにあらねばなり。導者は灰の丘を左にして進まんとす。忽ち見る。我等の往手に火の海の横れるありて、身幹《みのたけ》數丈なる怪しき人影のその前にゆらめくを。これ我等に前だてる旅客の一群なり。
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