閧ト全く排せられ畢《をはん》ぬ。
われ等はサルルスト[#「サルルスト」に傍線]が故宅の前に立てり。博士帽を脱して云ふやう。縱《たと》ひ靈魂は逸し去らんも、吾|豈《あに》その遺骸を拜せざらんやと。前壁には、ヂアナ[#「ヂアナ」に傍線]とアクテオン[#「アクテオン」に傍線]との大圖を畫けり。(アクテオン[#「アクテオン」に傍線]は、希臘の男神の名なり、女神ヂアナ[#「ヂアナ」に傍線]を垣間《かいま》見て、罰のために鹿に變ぜられ、畜《やしな》ふ所の群犬に噬《か》まる。)二個の「スフインクス」(女首獅身の石像)を脚としたる大理石の巨卓《おほづくゑ》あり。傳へいふ、初めこの皓潔《こうけつ》玉の如き卓を發掘せしとき、工夫は驚喜の餘、覺えず聲を放ちて叫びぬと。されど我を動すことこれより深かりしは、色褪せたる人骨と灰に印せる美しき婦人の乳房となりき。
われ等は廣こうぢを過ぎて、ユピテル[#「ユピテル」に傍線]の祠《ほこら》の前に至りぬ。日は白き大理石の柱を照せり。其|背後《うしろ》にはヱズヰオ[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山あり。巓《いたゞき》よりは黒烟を吐き、半腹を流れ下る熔巖の上には濃き蒸氣|
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