魔ノこそ。

   絶交書

 拿破里《ナポリ》に來てより既に一月を經ぬ。さるにアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]とベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]との上に就きては、何の聞くところもあらず。或夕一封の書は到りぬ。何人のいかなる便するにかと、打ち返してこれを見るに、印はボルゲエゼ[#「ボルゲエゼ」に傍線]家の印にして、筆は主公の筆なり。われは心に聖母《マドンナ》を祈りつゝ、開いてこれを讀みたり。其文に曰く。
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御書状拜讀|仕候《つかまつりそろ》。素《も》と拙者の貴君の御世話|可致《いたすべく》と決心候節、貴君の爲めに謀《はかり》候は、當地に於いて正當なる教育を受けられ、社會に益ある一人物となられ候樣にと希望候儀に有之《これあり》候。然處《しかるところ》貴君の行跡全く此希望と相反《あひそむき》候は、今更是非なき次第と諦念《あきらめ》候より外無之候。當初|御萱堂《ごけんだう》不幸之|砌《みぎり》、存寄《ぞんじよ》らざる儀とは申《まうし》ながら、拙者の身上共禍因と連係候故、報謝の一端にもと志候御世話も、此の如く相終候上は、最早債を償《つぐの》ひ劵《ふだ》を折
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