Xの垂楊の枝は低《た》れて地に曳かんとせり。
日の夕《ゆふべ》にガリリヤノ[#「ガリリヤノ」に二重傍線]の河を渡りぬ。古のミンツルネエ[#「ミンツルネエ」に二重傍線](羅馬の殖民地)は此岸にありしなり。我好古の眼《まなこ》もて視るときは、是れ猶|古《いにしへ》のリリス[#「リリス」に二重傍線]河にして、其水は蘆荻《ろてき》叢間の黄濁流をなし、敗將マリウス[#「マリウス」に傍線]が殘忍なるズルラ[#「ズルラ」に傍線]に追躡《ついせふ》せられて身を此岸に濳めしも、昨《きのふ》の猶《ごと》くぞおもはるゝ。(紀元前八十八年ズルラ[#「ズルラ」に傍線]政柄《せいへい》を得つる時、マリウス[#「マリウス」に傍線]これと兵馬の權を爭ふ。所謂第一|内訌《ないこう》是なり。マリウス[#「マリウス」に傍線]敗れて此河岸に濳み、萬死を出で一生を得て、難を亞弗利加《アフリカ》に避けしが、その翌年土を捲きて重ねて來るや、羅馬府を陷いれ、兵を縱《はな》ちて殺戮《さつりく》せしむること五日間なりき。)此よりサンタガタ[#「サンタガタ」に二重傍線]までは、まだ若干の路程あるに、闇《やみ》は漸く我等の車を罩《つゝ》ま
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