ォ巖の頂に斂《をさ》めて、晴れたる空の日を凝矚《ぎようしよく》すること、其光のあらん限を吸ひ取らんと欲する如くなりき。一隻は高く虚空に翔《かけ》りて、大圈を畫し、林※[#「木+越」、第3水準1−86−11]《りんゑつ》沼澤を下瞰《かかん》するが如くなりき。岸に近き水面には緑樹の影を倒せるありて、その中央には碧空の光を※[#「くさかんむり/(酉+隹)/れんが」、第3水準1−91−44]《ひた》すを見る。時に大魚の浮べるあり。その脊は覆《くつがへ》りたる舟の如し。忽ち彼雛鷲は電《いなづま》の撃つ勢もて、さと卸《おろ》し來つ。刃《やいば》の如き利爪《とづめ》は魚の背を攫《つか》みき。母鳥は喜、色に形《あらは》れたり。然るに鳥と魚とは力|相若《あひし》くものなりければ、鳥は魚を擧ぐること能はず、魚は鳥を沈むること能はず、打ち込みたる爪の深かりしために、これを拔かんとするも、亦意の如くならず。こゝに生死の爭は始まりぬ。今まで靜なりける湖水の面は、これがために搖り動され、大圈をなせる波は相重りて岸に迫れり。既にして波上の鳥と波底の魚と、一齊に鎭《しづ》まり、鷲の翼の水面《みのも》を掩《おほ》ふこと
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