ワ人々の目に留まりし童はアントニオ[#「アントニオ」に傍線]、おん身なりしか。われ。いかにも初め目に留まりしは我なりき。されど勝をば君に讓りしなり。姫はげに思ひも掛けぬ事かなと、我兩手を把《と》りて我面を見るに、媼さへその氣色《けしき》の常ならぬを訝《いぶか》りて、椅子をいざらせ、我等が方をうちまもりぬ。姫は珍らしき再會の顛末《もとすゑ》を媼に説き聞《きか》せつ。われ。我母もその外の人々も暫くは君が上をのみ物語りぬ。その姿のやさしさ、その聲の軟さをば、穉き我心にさへ妬《ねた》ましきやうに覺えき。姫。その時君は金《かね》の控鈕《ボタン》附きたる短き上衣を着たまひしこと今も忘れず。その衣をめづらしと見しゆゑ、久しく記憶に殘れるなるべし。我。君は又胸の上に美しき赤き鈕《ひも》を垂れ給ひぬ。されど最も我目に留まりしはそれにはあらず。君が目、君が黒髮なりき。人となり給へる今も、その俤《おもかげ》は明に殘れり。始て君がヂド[#「ヂド」に傍線]に扮し給へるを見しとき、われは直ちにこの事をベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]に語りぬ。さるをベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]はそを我迷ぞといひ
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