スり。圖の下の端なる死人の起つあたり、艤《ふなよそひ》せる羅刹《らせつ》の罪あるものを拉《ひ》き去るあたりは、早や暗黒裡に沒せるに、基督とその周匝《めぐり》なる天翔《あまがけ》る靈とは猶金色に照されたり。日の入ると共に最後の燭は吹き滅《け》されて、讀誦は全く果てたり。暗黒は審判の圖の全面を覆へり。絲聲肉聲は又湧きて、世の季《すゑ》の審判の喜怒哀樂皆洋々たる音となりつゝ、われ等の頭上を漲り過ぐ。
法皇は式の衣を脱ぎて、贄卓《にへづくゑ》の前に立ち、十字架を拜せり。金笛の響凄じく、「ポプルス、メウス、クヰツト、フエチイ、チビイ」の歌は起りぬ。低階の調に雜《まじ》る軟《やはらか》なる天使の聲は、男の胸よりも出でず、女の胸よりも出でず、こは天上より來れるなり。こは天使の涙の解けて旋律に入りたるなり。
われはこれを聽きて、力づき甦《よみがへ》り、この頃になき歡喜は胸に滿ちたり。われはアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を愛し、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]を愛せり。この瞬時の愛はかの天上の靈の相愛するに殊《こと》ならざるべし。祈祷の我に與へざりし安慰は、今音樂にて我に授けられた
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