A貧人の兒ども簇《むらが》りて、松明《まつ》より散る火の子を眺め、手を打ちて歡び呼べり。われも昔はかゝる兒どもの夥伴《つれ》なりしに、今堂上にありて羅馬の貴族に交るやうになりたるは、いかなる神のみ惠ぞ。われは帷《とばり》の蔭に跪《ひざまづ》きて神に謝したり。

   謝肉祭

 その夜は曉近くなりて歸りぬ。二日たちて人々は羅馬を立ち給ひぬ。ハツバス・ダアダア[#「ハツバス・ダアダア」に傍線]は日ごとに我を顧みて、ことしは「アバテ」の位受くべき歳ぞと、いましめ顏にいふ。されば此頃は文よむ窓を離れずして、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]をも外の友をも尋ぬることなかりき。週を累《かさ》ね月を積みて、試驗|畢《をは》る日とはなりぬ。
 黒き衣、短き絹の外套。是れ久しく夢みし「アバテ」の服ならずや。目に觸るゝもの一つとして我を祝せざるなし。街を走る吹聽人はいふも更なり、今咲き出づる「アネモオネ」の花、高く聳ゆる松の末《うれ》より空飛ぶ雲にいたるまで、皆我を祝する如し。恰も好しフランチエスカ[#「フランチエスカ」に傍線]の君は、臨時の費《つひえ》もあるべく又日ごろの勞《つかれ》をも忘れしめ
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