すとも。縄が新しくなると、当分当りどころが違うから、縛《いましめ》を感ぜないのだろうと、僕は思っているのです」
「そんなら寧《むし》ろ消極のままで、懐疑に安住していたらどうでしょう」
「懐疑が安住でしょうか」
純一は一寸窮した。「安住と云ったのは、矛盾でした。つまり永遠の懐疑です」
「なんだか咀《のろ》われたものとでも云いそうだね」
「いいえ。懐疑と云ったのも当っていません。永遠に求めるのです。永遠の希求です」
「まあ、そんなものでしょう」
大村の詞はひどく冷澹《れいたん》なようである。しかしその音調や表情に温《あたたか》みが籠《こも》っているので、純一は不快を感ぜない。聖堂の裏の塀のあたりを歩きながら、純一は考え考えこんな事を話し出した。
「さっき倶楽部でもお話をしたようですが、僕はマアテルリンクを大抵読んで見ました。それから同じ学校にいた友達だというので、Verhaeren《フェルハアレン》を読み始めたのです。この間La Multiple Splendeur《ラ ミュルチプル スプランドヨオル》が来たもんですから、それを国から出て来るとき、汽車で読みました。あれには大分纏まった
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