tい掛かる。それを余所に見て、余りに気軽なマリイ・ルイイズは、閨《ねや》に入って夫に戯れ掛かる。陽に拒み、陰に促して、女は自分の寝支度を夫に手伝わせる。半ば呑《の》み半ば吐く対話と共に、女の身の皮は笋《たかんな》を剥ぐ如くに、一枚々々剥がれる。所詮東京の劇場などで演ぜられる場では無い。女の紙入れが出る。「お前は生涯|己《おれ》の写真を持ち廻るのか」「ええ。生涯持ち廻ってよ」「ちょっと見たいな」「いじっちゃあ、いや」「なぜ」「どうしてもいや」「そう云われると見たくなるなあ」「直ぐ返すのなら」「返さなかったら、どうする」「生涯あなたに物を言わないわ」「ちと覚束《おぼつか》ないな」「わたし迷信があるの。それを見られると」「変だぞ。変だぞ。その熱心に隠すのが怪しい」「開けないで下さいよ」「開ける。間男の写真を拝見しなくては」こんな対話の末、紙入れは開かれる。大金《たいきん》が出る。蒸暑い恋の詞が、氷のように冷たい嫌疑の詞になる。純一は目の痛むのも忘れて、Bresil[#「e」は「´」付き]《ブレジル》へ遣《や》られる青年を気の毒がって、マリイ・ルイイズが白状する処まで、一息に読んでしまった。そ
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