|4−8、181−8]《コオフィイ》にcreme[#一つ目の「e」は「`」付き]《クレエム》を誂えたが、クレエムが来たかと思うと、直ぐに代りを言い付けて、ぺろりと舐めてしまう。又代りを言い付ける。見る間に四皿舐めた。どうしても生涯に一度クレエムを食べたい程食べて見たいと思っていたとしか思われない。純一はなんとなく無気味なように感じて、食べているものの味が無くなった。謂《い》わばロオマ人の想像していたようなlemures《レムレス》の一人が、群を離れて這入って来たように感じたのである。これには仏教の方の餓鬼という想像も手伝っていたかも知れない。とにかく迷信の無い純一がどうした事かこの女を見て、旅行が不幸に終る前兆のように感じたのである。
 急行の出る九時が段段近づいて来ると共に、客がぽつぽつこの間《ま》に這入って来て、中には老人や子供の交った大勢の組もあるので、純一の写象はやっと陰気でなくなった。どこかの学校の制服を着た、十五六の少年が煖炉の火を掻き起して、「皆ここへお出《い》で」と云って、弟や妹を呼んでいる。誰《たれ》かが食事を誂える。誰かが誂えたものが来ないと云って、小言を言う。
 
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