。それから会話がはずんで、種々な事を聞くうちに、大村が外国語をしているかと問うと、独逸《ドイツ》語だと云う。独逸語を遣っている女というものには、大村はこの時始て出逢ったのである。
懇親会の翌日、大村の所へ茂子の葉書が来た。又暫く立つと、或る日茂子が突然大村の下宿へ尋ねて来た。Sudermann《ズウデルマン》のZwielicht《ズヴィイリヒト》を持って、分からない所を質問しに来たのである。さ程見当違いの質問ではなかった。しかし問わない所が皆分かっているか、どうだかと云うことを、ためして見るだけの意地わるは大村には出来なかった。
その次の度には、Nicht doch《ニヒト ドホ》と云う、Tavote《タヴォオテ》の短篇集を持って来た。先ず「ニヒト・ドホはなんと訳しましたら宜《よろ》しいのでしょう」と問われたには、大村は少からず辟易《へきえき》したと云うのである。これを話す時、大村は純一に、この独逸特有の語《ことば》を説明した。フランスのpoint du tout《ポアン ドュ ツウ》や、nenni−da[#「a」は「`」付き]《ナンニイ ダア》に稍《やや》似ていて、どこやら符合し
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