ので、揉《も》みくちゃにせられて袂《たもと》に入れられた。
純一は証拠を湮滅《いんめつ》[#底本はルビを「えんめつ」と誤植]させた犯罪者の感じる満足のような満足を感じた。
便所から出て来た大村は、「もうそろそろお暇《いとま》をしようか」と云って、中腰になって火鉢に手を翳《かざ》した。
「旅行の準備でもあるのですか」
「何があるものか」
「そんなら、まあ、好《い》いじゃありませんか」
「君も寂しがる性《たち》だね」と云って、大村は胡座《あぐら》を掻いて、又紙巻を吸い附けた。「寂しがらない奴は、神経の鈍い奴か、そうでなければ、神経をぼかして世を渡っている奴だ。酒。骨牌《かるた》。女。Haschisch《ハッシッシュ》」
二人は顔を見合せて笑った。
それから官能的受用で精神をぼかしているなんということは、精神的自殺だが、神経の異様に興奮したり、異様に抑圧せられたりして、体をどうしたら好《い》いか分らないようなこともある。そう云う時はどうしたら好いだろうと、純一が問うた。大村の説では、一番健全なのはスエエデン式の体操か何かだろうが、演習の仮設敵のように、向うに的を立てなくては、倦《う》
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