晴れしさに釣り込まれて答えた。「なに。丁度|好《い》いと思っていました。どこと云って行《い》くような処もないのですから」
 大村の話を聞けば、休暇中一月の十日頃まで、近県旅行でもしようかと思う、それで告別の心持で来たということである。純一は心から友情に感激した。
 一つ二つ話をしているうちに、大村が机の上にある青い鳥の脚本に目を附けた。
「何か読んでいるね」と云って、手に取りそうにするので、純一ははっと思った。中におちゃらの名刺の挟んであるのを見られるのが、心苦しいのである。
 そこで純一は機先を制するように、本を手に取って、「L'oiseau bleu《ロアゾオ ブリヨオ》です」と云いながら、自分で中を開けて、初《はじめ》の方をばらばらと引っ繰り返して、十八ペエジの処を出した。
「ここですね。A peine Tyltyl a−t−il tourne[#「tourne」の「e」は「´」付き] le diamant, qu'un changement soudain et prodigieux s'opere[# 「s'opere」の一つ目の「e」は「`」付き] en toutes chos
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