そうであったが、会費が余り窮屈には見積ってない処へ、侯爵家の寄附があったから、その心配はないと云って、曽根は席を起《た》った。
四五人を隔てて据わっていた瀬戸が、つと純一の前に来た。そして小声で云った。
「僕のような学生という奴は随分侮辱せられているね。さっきからの議論を聞いただろう」
純一が黙って微笑《ほほえ》んでいると、瀬戸は「君は学生ではないのだが」と言い足した。
「もう冷かすのはよし給え。知らない人ばかりの宴会だから、恩典に浴したくなかったのだ。僕はこんな会へ来たら、国の詞《ことば》でも聞かれるかと思ったら、皆|東京子《とうきょうっこ》になってしまっているね」
「そうばかりでもないよ。大臣の近所へ行って聞いていて見給え。ござりますのざに、アクセントのあるのなんぞが沢山聞かれるから」
「まあ、どうやらこうやら柳橋の芸者というものだけは、近くで拝見ができそうだ」
「なに。今頃出し抜《ぬけ》に掛けたって、ろくな芸者がいるものか。よくよくのお茶碾《ちゃひ》きでなくては」
「そういうものかね」
こんな話をしている時、曽根が座敷の真中に立って、大声でこう云った。
「諸君。大臣閣下は外
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