おうへん》している。
 風景画なんぞは、どんなに美しい色を出して製版してあっても、お雪さんの注意を惹《ひ》かない。人物に対してでなくては興味を有せないのである。風景画の中の小さい点景人物を指して、「これはどうしているのでしょう」などと問う。そんな風で純一は画解きをさせられている。
 袖と袖と相触れる。何やらの化粧品の香《か》に交って、健康な女の皮膚の※[#「※」は「勹+二」、第3水準1−14−75、113−9]《におい》がする。どの画かを見て突然「まあ、綺麗《きれい》だこと」と云って、仰山に体をゆすった拍子に、腰のあたりが衝突して、純一は鈍い、弾力のある抵抗を感じた。
 それを感ずるや否や、純一は無意識に、殆ど反射的に坐を起って、大分遠くへ押し遣《や》られていた火鉢の傍《そば》へ行って、火箸《ひばし》を手に取って、「あ、火が消えそうになった、少しおこしましょうね」と云った。
「わたくしそんなに寒かないわ」極めて穏かな調子である。なぜ純一が坐を移したか、少しも感ぜないと見える。
「こんなに大きな帽子があるでしょうか」と云うのを、火をいじりながら覗《のぞ》いて見れば、雑誌のしまいの方にある
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