られて、此|企《くはだて》を抛棄《はうき》してしまつた。
 私は去年五月五日に、仙台新寺小路|孝勝寺《かうしやうじ》にある初子の墓に詣《まう》でた。世間の人の浅岡の墓と云つて参るのがそれである。古色のある玉垣《たまがき》の中に、新しい花崗石《くわかうせき》の柱を立てゝ、それに三沢初子之墓と題してある。それを見ると、近く亡くなつた女学生の墓ではないかと云ふやうな感じがする。あれは脇《わき》へ寄せて建てゝ欲しかつた。仏眼寺の品が墓へは、私は往かなかつた。



底本:「鴎外歴史文学集 第三巻」岩波書店
   1999(平成11)年11月25日発行
入力:kompass
校正:しず
2001年8月31日公開
2006年5月1日修正
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