の通番頭《かよいばんとう》で、年は三十二、三であった。栄次郎は妹が自分たち夫婦に慊《あきたら》ぬのを見て、妹に壻を取って日野屋の店を譲り、自分は浜照を連れて隠居しようとしたのである。
壻に擬せられている番頭某と五百となら、旁《はた》から見ても好配偶である。五百は二十九歳であるが、打見《うちみ》には二十四、五にしか見えなかった。それに抽斎はもう四十歳に満ちている。貞白は五百の意のある所を解するに苦《くるし》んだ。
そこで五百に問い質《ただ》すと、五百はただ学問のある夫が持ちたいと答えた。その詞《ことば》には道理がある。しかし貞白はまだ五百の意中を読み尽すことが出来なかった。
五百は貞白の気色《けしき》を見て、こう言い足した。「わたくしは壻を取ってこの世帯《せたい》を譲ってもらいたくはありません。それよりか渋江さんの所へ往って、あの方《かた》に日野屋の後見《うしろみ》をして戴《いただ》きたいと思います。」
貞白は膝《ひざ》を拍《う》った。「なるほど/\。そういうお考えですか。宜《よろ》しい。一切わたくしが引き受けましょう。」
貞白は実に五百の深慮遠謀に驚いた。五百の兄栄次郎も、姉
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