は材能があっても軽《かろ》んぜられる。生徒は多く不平に堪えなかった。中にも東京人某は、己《おのれ》が上位に置かれているにもかかわらず、「この教授法では延寿太夫が最優等生になる」と罵《ののし》った。
 保は英語を操《つか》い英文を読むことを志しているのに、学校の現状を見れば、所望に※[#「りっしんべん+(匚<夾)」、第3水準1−84−56]《かな》う科目は絶《たえ》てなかった。また縦《たと》い未来において英文の科が設けられるにしても、共に入学した五十四人の過半は純乎《じゅんこ》たる漢学諸生だから、スペルリングや第一リイダアから始められなくてはならない。保はこれらの人々と歩調を同じうして行くのを堪えがたく思った。
 保はどうにかして退学したいと思った。退学してどうするかというと、相識のフルベックに請うて食客にしてもらっても好《い》い。また誰《たれ》かのボオイになって海外へ連れて行ってもらっても好い。モオレエ夫婦などの如く、現に自分を愛しているものもある。頼みさえしたら、ボオイに使ってくれぬこともあるまい。こんな夢を保は見ていた。
 保は此《かく》の如くに思惟《しゆい》して、校長、教師に敬意
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