十俵を給し、目見《めみえ》以下の士に列せしめ、本所横川邸の番人を命じた。然るに源吾は年老い身病んで久しく職におりがたいのを慮《おもんばか》って、養子を求めた。
 この時源吾の親戚《しんせき》に戸沢惟清《とざわいせい》というものがあって、専六をその養子に世話をした。戸沢は五百《いお》に説くに、山田の家世《かせい》の本《もと》卑《いやし》くなかったのと、東京|勤《づとめ》の身を立つるに便なるとを以てし、またこういった。「それに専六さんが東京にいると、後《のち》に弟御《おとうとご》さんが上京することになっても御都合が宜《よろ》しいでしょう」といった。成善《しげよし》は等を降《くだ》され禄を減ぜられた後、東京に往って恥を雪《すす》ごうと思っていたからである。
 戸沢がこういって勧めた時、五百は容易にこれに耳を傾《かたぶ》けた。五百は戸沢の人《ひと》と為《な》りを喜んでいたからである。戸沢惟清、通称は八十吉《やそきち》、信順《のぶゆき》在世の日の側役《そばやく》であった。才幹あり気概ある人で、恭謙にして抑損し、些《ちと》の学問さえあった。然るに酒を被《こうぶ》るときは剛愎《ごうふく》にして人を凌
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