《い》い版の『十三|経註疏《ぎょうちゅうそ》』だが、お父《と》う様がお前のだと仰《おっしゃ》った。今年はもう三回忌の来る年だから、今からお前の傍《そば》に置くよ」といった。
 数日の後に矢島|優善《やすよし》が、活花《いけばな》の友達を集めて会をしたいが、緑町の家には丁度|好《い》い座敷がないから、成善の部屋を借りたいといった。成善は部屋を明け渡した。
 さて友達という数人が来て、汁粉《しるこ》などを食って帰った跡で、戸棚の本箱を見ると、その中は空虚であった。
 三月六日に優善は「身持《みもち》不行跡|不埒《ふらち》」の廉《かど》を以て隠居を命ぜられ、同時に「御憐憫《ごれんびん》を以て名跡《みょうせき》御立被下置《おんたてくだされおく》」ということになって、養子を入れることを許された。
 優善のまさに養うべき子を選ぶことをば、中丸昌庵が引き受けた。然るに中丸の歓心を得ている近習詰百五十石六人扶持の医者に、上原元永《うえはらげんえい》というものがあって、この上原が町医|伊達周禎《だてしゅうてい》を推薦した。
 周禎は同じ年の八月四日を以て家督相続をして、矢島氏の禄二百石八人扶持を受けるこ
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