斎の女《むすめ》の中《うち》では純《いと》と棠との容姿が最も人に褒《ほ》められていた。五百の兄栄次郎は棠の踊を看《み》る度に、「食い附きたいような子だ」といった。五百も余り棠の美しさを云々《うんぬん》するので、陸は「お母《か》あ様の姉《ね》えさんを褒めるのを聞いていると、わたしなんぞはお化《ばけ》のような顔をしているとしか思われない」といい、また棠の死んだ時、「大方お母あ様はわたしを代《かわり》に死なせたかったのだろう」とさえいった。
その七十
女《むすめ》棠《とう》が死んでから半年《はんねん》の間、五百《いお》は少しく精神の均衡を失して、夕暮になると、窓を開けて庭の闇《やみ》を凝視していることがしばしばあった。これは何故《なにゆえ》ともなしに、闇の裏《うち》に棠の姿が見えはせぬかと待たれたのだそうである。抽斎は気遣《きづか》って、「五百、お前にも似ないじゃないか、少ししっかりしないか」と飭《いまし》めた。
そこへ矢島玄碩の二女、優善《やすよし》の未来の妻たる鉄が来て、五百に抱かれて寝ることになった、※[#「虫+果」、第4水準2−87−59]※[#「贏」の「貝」に代えて「
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