ととおり》わからぬこともないが、これでは平井の気には入るまい。足下《そっか》は気が利《き》かないのだ。」
こういって置いて、貞固は殆《ほとん》ど同じような文句を巻紙《まきがみ》に書いた。そしてそれを東堂の手にわたした。
「どうだ。これで好《い》いかな。」
東堂は毫《ごう》も敬服しなかった。しかし故参の文案に批評を加えることは出来ないので、色を和《やわら》げていった。
「いや、結構です。どうもお手を煩わして済みません。」
貞固は案を東堂の手から取って、藤田にわたしていった。
「さあ。これを清書しなさい。文案はこれからはこんな工合に遣《や》るが好い。」
藤田は「はい」といって案を受けて退いたが、心中には貞固に対して再造の恩を感じたそうである。想《おも》うに東堂は外《ほか》柔にして内《うち》険、貞固は外《ほか》猛にして内《うち》寛であったと見える。
わたくしは前に貞固が要職の体面《たいめん》をいたわるがために窮乏して、古褌《ふるふんどし》を着けて年を迎えたことを記《しる》した。この窮乏は東堂といえどもこれを免るることを得なかったらしい。ここに中井敬所《なかいけいしょ》が大槻如電《お
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