渋江抽斎
森鴎外

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)三十七年如一瞬《さんじゅうしちねんいっしゅんのごとし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)城主|津軽順承《つがるゆきつぐ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+片」、第3水準1−86−57]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)「許せ/\」
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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   その一

 三十七年如一瞬《さんじゅうしちねんいっしゅんのごとし》。学医伝業薄才伸《いをまなびぎょうをつたえてはくさいのぶ》。栄枯窮達任天命《えいこきゅうたつはてんめいにまかす》。安楽換銭不患貧《あんらくぜににかえひんをうれえず》。これは渋江抽斎《しぶえちゅうさい》の述志の詩である。想《おも》うに天保《てんぽう》十二年の暮に作ったものであろう。弘前《ひろさき》の城主|津軽順承《つがるゆきつぐ》の定府《じょうふ》の医官で、当時|近習詰《きんじゅ
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