たのを知った。そしていつもの詞を唱えやめて、見えぬ目でじっと前を見た。そのとき干した貝が水にほとびるように、両方の目に潤《うるお》いが出た。女は目があいた。
「厨子王」という叫びが女の口から出た。二人はぴったり抱き合った。
[#地から1字上げ]大正四年一月



底本:「日本の文学 3 森鴎外(二)」中央公論社
   1972(昭和47)年10月20日発行
入力:真先芳秋
校正:野口英司
1998年7月21日公開
2006年5月16日修正
青空文庫作成ファイル:
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