る。札は孔《あな》を穿《うが》ち緒《を》を貫き、覆《おほ》ふに革袋《かはぶくろ》を以てしてある。革袋は黒の漆塗で、その水戸家から受けたものには、眞志の二字が朱書してある。
 想ふに授受が眞志屋と金澤氏との間に行はれた初には、縱《よし》や實に寓公たらぬまでも、眞志屋の名前人が立てられてゐたが、後に至つては特にこれを立つることを須《もち》ゐなかつたのではなからうか。兎に角金澤氏の代々の當主は、徳川將軍家に對しては金澤丹後たり、水戸宰相家に對しては眞志屋五郎兵衞たることを得たのである。「まあ株を買つたやうなものだつたのでせう」と蒼夫さんは云ふ。今の語を以て言へば、此授受の形式は遂に「併合」に歸したのである。
 眞志屋の末裔《ばつえい》が二本に寄り、金澤に寄つたのは、啻《たゞ》に同業の好《よしみ》があつたのみではなかつたらしい。二本は眞志屋文書に「親類麹町二本傳次方」と云つてある。又眞志屋の相續人たるべき定五郎は「右傳次方私從弟定五郎」と云つてある。皆眞志屋五郎兵衞が此の如くに謂つたのである。金澤氏は果して眞志屋の親戚であつたか否か不明であるが、試に系譜を檢するに、貞享中に歿した初代相安院清頓
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