から帰った後、旧に依って稲本に通っていた。相方は小稲であった。然るにこの頃同じ家に花鳥と云う昼三《ちゅうさん》がいた。花鳥は恐るべき経歴を有していた。ある時は人の囲いものとなっていて情夫と密会し、暇《いとま》を取る日に及んで、手切金を強請した。ある時は支度金を取って諸侯の妾《しょう》に住み込み、故意に臥所《ふしど》に溺《いばり》して暇になった。そしてその姿態は妖艶《ようえん》であった。
花鳥は廊下で香以に逢うごとに秋波《しゅうは》を送った。ある夕《ゆうべ》小稲が名代床《みょうだいどこ》へ往って、香以が独《ひとり》無聊《ぶりょう》に苦んでいると、花鳥の使に禿《かぶろ》が来た。香以はうっかり花鳥の術中に陥った。
数日の後であった。大引過《おおびけすぎ》の夜は寂としていた。香以は約を履《ふ》んで花鳥の屏風の中に入った。忽《たちま》ち屏風をあららかに引き退けて飛び込んだものがある。それは小稲の番新《ばんしん》豊花であった。
香以は豊花に拉《ひ》いて往かれて座敷に坐った。鶴彦は急使を以て迎えられた。巽育《たつみそだち》の豊花が甲走った声に誘《いざな》われて、無遠慮な男女は廊下に集まり、次の
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