は又兵衛、長谷川町の待合茶屋である。真国は通称七兵衛である。
 狂言作者には河竹新七、次で瀬川|如皐《じょこう》がある。新七は元の柴晋助《しばしんすけ》である。
 彫工には石黒某がある。画家には取巻に算すべからざる人もあるが、松本交山、狩野|晏川《あんせん》、月岡芳年、柴田是真、鳥居清満、辻花雪、福島|隣春《ちかはる》、四方梅彦がある。傭書家には宮城玄魚がある。
 商人もしくは商家の隠居には先ず小倉|阿猿《おさる》がある。団子坂の質屋の隠居で、後に是阿弥と云った。阿心庵是仏がある。谷中三河屋の主人である。大津屋|古朴《こぼく》がある。船宿の隠居である。金屋仙之助の竺仙《ちくせん》がある。竹川町の競《せり》呉服商である。
 医師に石川|甫淳《ほじゅん》がある。外科専門であった。俳諧の号を雁伍《がんご》と云った。
 落語家には乾坤坊良斎、五明楼|玉輔《たますけ》、春風亭柳枝、入船米蔵がある。玉輔は馬生《ばしょう》の後の名である。講談師には二代目文車、桃川|燕国《えんこく》、松林伯円がある。燕国は後の如燕《じょえん》である。

       八

 専業の幇間《ほうかん》で、当時山城河岸の家
前へ 次へ
全55ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング