つなりのり》[#ルビの「だんじょう」は底本では「だんじゅう」]の奥に仕えていた。竜池は尋《つい》で三十間堀住の十人衆三村清左衛門の分家、竹川町の鳥羽屋三村清吉の姉すみを納《い》れて後妻とし、同時に山王町に別宅を構えて妾《しょう》を置いた。
 未だ幾《いくばく》ならぬに、竜池は将《まさ》に刑辟《けいへき》に触れむとして纔《わずか》に免れた。これは女郎買案内を作って上梓《じょうし》し、知友の間に頒《わか》った事が町奉行の耳に入ったのである。頼《さいわい》に加賀町の名主田中平四郎がこれを知って、密《ひそか》に竜池に告げた。竜池は急に諸役人に金を餽《おく》って弥縫《びほう》し、妾に暇を遣《つかわ》し、別宅を売り、遊所通《ゆうしょがよい》を止めた。内山町の盲人|百島勾当《ももしまこうとう》の家を遊所《あそびどころ》として諸持等を此《ここ》に集《つど》えることになったのは当時の事である。
 子之助はこの年十二月下旬に継母の里方鳥羽屋に預けられた。これは新宿、品川二箇所の引手茶屋に借財を生じたためである。子之助時に二十歳であった。
 然るに竜池の遊所通は罷《や》んでも、子之助のは罷まなかった。天保十
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