。それをお奉行様がきいてくだすって、おとっさんが助かれば、それでいい。子供はほんとうに皆殺されるやら、わたしが殺されて、小さいものは助かるやら、それはわからない。ただお願いをする時、長太郎だけはいっしょに殺してくださらないように書いておく。あれはおとっさんのほんとうの子でないから、死ななくてもいい。それにおとっさんがこの家の跡を取らせようと言っていらっしゃったのだから、殺されないほうがいいのである。いちは妹にそれだけの事を話した。
「でもこわいわねえ」と、まつが言った。
「そんなら、おとっさんが助けてもらいたくないの。」
「それは助けてもらいたいわ。」
「それ御覧。まつさんはただわたしについて来て同じようにさえしていればいいのだよ。わたしが今夜|願書《ねがいしょ》を書いておいて、あしたの朝早く持っていきましょうね。」
いちは起きて、手習いの清書をする半紙に、平がなで願書《がんしょ》を書いた。父の命を助けて、その代わりに自分と妹のまつ、とく、弟の初五郎をおしおきにしていただきたい、実子でない長太郎だけはお許しくださるようにというだけの事ではあるが、どう書きつづっていいかわからぬので、幾
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