と十太夫等との對決があることになつた。立會として井伊|掃部頭《かもんのかみ》直孝、酒井|雅樂頭《うたのかみ》忠世、酒井|讚岐守《さぬきのかみ》忠勝、松平|下總守《しもふさのかみ》忠弘、永井信濃守尚政、青山|大膳亮《だいぜんのすけ》幸利、板倉|周防守《すはうのかみ》重宗、稻葉丹後守正勝、尾張家附成瀬隼人正、紀伊家附安藤帶刀、大目附柳生但馬守|宗矩《むねのり》、秋山修理亮、水野河内守、加々爪《かゞづめ》民部の人々が利勝の左右に著座する。大目附席から一間隔てゝ、一方には竹中采女正に引き添つて利章がすわる。其向側には一成、其次に十太夫がすわる。
其時一應の調があつた。利章は只|此度《このたび》の事は聊《いさゝか》存ずる旨《むね》があつて申し上げた、先年自分が諫書に認《したゝ》めて出した件々、又其後に生じた似寄の件々を、しかと調べて貰ひたい、さうなつたら此度の事の萌芽が知れやうと云つた切《きり》、口を噤《つぐ》んでしまつた。一成、十太夫は主人右衞門佐に逆意があるなどゝは跡形もない事で、なぜ利章がそんな訴をしたか分からぬと云つた。次で二人は老中側で忠之の越度と認めた廉々《かど/\》に就いて、事實
前へ
次へ
全42ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング